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射出成形品の表面外観改良

  • 執筆者の写真: 前田修一
    前田修一
  • 4月21日
  • 読了時間: 4分

更新日:5月5日

エチレンプロピレンブロックコポリマー(EPBC)を基材としたポリプロピレン(PP)系アロイ材は、各種熱可塑性ゴムやタルクなどの無機フィラーを溶融混練することで調製されます。この材料は、その優れたコストパフォーマンスにより、自動車のバンパーなどの大型射出成形品に多く用いられています。大型射出成形品の代表的な表面外観として、図1に示したように、射出成形品のゲート直下に流動方向に平行に筋状の凹凸や、末端部に樹脂の流動方向に対してほぼ直角に光沢部と曇り部が交互に現れるタイガーストライプ型のフローマーク(FM)が挙げられます。


図1 代表的な表面外観不良の模式図

ゲート直下の筋状の凹凸


図1に見られるように、筋状の凹凸は使用される金型および射出成形条件に依存しますが、成形品表面に現れるその長さが20~25mmにも及ぶことがあります。ゲートから成形品までの距離がある金型を用いた射出成形では、たとえこのような筋状の凹凸が発生しても、それらが成形品表面に達することはなく、問題にはなりませんでした。しかし、最近では、ゲートから成形品までの距離を短くする傾向が強まっています。このため、ゲート直下における筋状凹凸の発生は、成形品の外観性を著しく損ねることになります。そのため、これらの発生を防止する成形加工指針や、それらが発生しない材料が強く求められるようになっています。


ここでは、PP系アロイ材料の組織構造とレオロジー特性の観点から、筋状凹凸の発生原因およびその発生機構について検討した結果を下記のFM-1-1に示します。



参照;Maeda S, et al., JSRJ, 35(5), 273-281(2007)


タイガーストライプ型フローマーク


PP系アロイ材料に限らず、さまざまなポリマー材料の代表的な射出成形品の表面外観不良の一つとして、タイガーストライプ型フローマーク(FM)が挙げられます。FMには、以下のような種類があります。


  1. ピッチが狭いレコード状FM

  2. 光沢部と曇り部が交互に、成形品表裏面で同位置に現れる同位相型FM

  3. 光沢部と曇り部が表裏異位相に現れる異位相型FM


この型のFMは、金型内を流動する材料のフローフロントの不安定流動(首振り運動)に起因して発生することが観察されています。フローフロントの首振り運動によるFMは、射出成形品の表裏面に光沢部と曇り部が千鳥状に生成することになり、図1に見られるようなFM発生パターンが形成されます。ここでは、このタイプのFMの発生機構に関する理論的アプローチとして、金型内におけるフローフロントの流動が不安定になるレオロジー的条件およびその条件とFMの発生機構との関連性について検討した結果を下記のFM-2に示します。



参照;Maeda S, et al., JSRJ, 35(5), 293-299(2007)


フローマークの視認性(目立ち)


タイガーストライプ型のFMにおいて、PP系アロイ材のフローフロントの安定性は、流動中の材料の弾性と粘性のバランスによって決まります。また、材料特性により弾性と粘性のバランスを制御することで、フローフロントの流動を安定化させ、FMの発生を防ぐことが可能です。しかしながら、FMを安定化させる手法では、流動長が長くなると、フローフロントは不安定化し、FMが発生することになります。特に、バンパーなどの大型成形品では、必然的に流動長が長くなるため、FMの発生を抑制することが難しくなります。


一方で、別の視点からのアプローチとして、FM発生を抑制するのではなく、FMを目立たなくする方法も報告されています。ここでは、広い成形条件で調製したPP系アロイ材料の射出成形品を用いて、FMの目立ち(視認性)を考慮に加え、FMと材料のレオロジー特性、成形条件の相関性について検討しました。また、その相関性に基づいたFM解消のための材料設計指針について説明します。



参照;Maeda S, JSRJ, 49(3), 215-220(2021)


特異なタイガーストライプ型フローマーク


FMは、金型内を流動する材料のフローフロントの不安定流動に起因して発生することが報告されています。上述したように、フローフロントの安定性は、流動中の材料のせん断応力と法線応力のバランスによって決まります。さらに、材料特性によりせん断応力と法線応力のバランスを制御することで、FMの発生を防ぐことができることが示されています。しかしながら、新規シラン系外部ドナーを用いて重合したPP/タルク系において、これまで示したようなレオロジー特性だけでは説明できないFMが発生することが分かってきました。ここでは、そのような特異なPP/タルク系のFMに関して検討した結果を示します。



参照;Maeda S, JSRJ, 45(5), 269-275(2017)


私たちポリマー材料ラボ(PML)は、PP系アロイ材料に関する研究開発を通じて、多くの経験と知見を有しています。ここでは、PP系アロイの射出成形品の表面外観性不良であるゲート直下の筋状凹凸およびFMの発生機構解明を通じて、それらを解消するための材料設計指針を挙げています。これらの経験と知見に基づき、PMLは顧客の皆様の課題解決のためのソリューションを提供いたします。

 
 
 

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